本物のドッグタグ。深澤直人「犬鑑札 SF09」

世田谷区 はじめまして 世田谷発犬にやさしい鑑札
世田谷区の犬鑑札*1が来年、平成21年4月から新しくなるそうです。なんでも、デザインを深澤直人に依頼した物だそうで
って深澤直人!?
いやいや…たかがドッグタグに深澤直人は税金の無駄遣いじゃないのか?などと思ってしまったわけなんですが、いやいやいやいや。これがまた、デザインを見てみますとですねぇ。

OPENERS - 深澤直人デザインの世田谷区「犬の鑑札」 | CASA Newsより直リンク引用
…。至って普通の"いわゆるドッグタグ"ですよね……。正直、もしかして報酬ケチって依頼したんじゃないかー?などと思ってしまいました!すみません!
それでも一緒に置かれていたPDFを読んでみますと、きちんと深澤さん本人の言葉でプレゼンテーションがされていました。以下要約。
そもそも犬鑑札は、法律で装着が義務づけられているにも関わらず、また犬が迷子になった際に捜索するための重要な手立てにもなるに関わらず、装着率が極めて低い。そして犬鑑札のない状態で保護された犬は、衛生の観点から殺処分されてしまうことになる。そこで、よく挙げられる犬鑑札への不満点を解消しその装着率を向上すべく、SF09では以下のような特徴を備えた。

  • 小型犬には大きすぎるという声に応え、サイズを小さく。
    • 従来:35*25(mm) → SF09:30*18(mm)
    • 法律で定められた文字の大きさで全てを記載できる最小サイズである(自称)
  • 耐久性の向上。
    • 従来エッチング加工であった文字を型打ちに変更(登録番号はレーザー刻印)。文字の摩耗に強くした。
    • 素材に3mm厚のアルマイト仕上げアルミを採用*2。アルミなら傷や酸化も美しい味になり、格好悪いという声にも応えられる。
    • アルミの利点は他にも多い。例えば、リサイクルが可能である点なども。
  • 従来別パーツであった狂犬病予防注射済票を、鑑札の裏へ貼り付けるシール式に変更。
    • 2枚のパーツに分かれていた事による装着性の悪さ、カチャカチャ音を解消することに成功。
  • カドのあるデザインでは危険であるとして、丸いデザインを採用。

とまぁ、意外とプレゼンポイントはあるもので…。でも、なんだか当たり前のポイントばかりに思えますね。
じゃあ、前のデザインはどんなのだったのかな?と探してみますと、例えば世田谷ではこんなのだったみたいです。

生活工房|生活工房ブログより直リンク引用
なるほど…。他の自治体の例なんかも見ると確かに、深澤直人はしっかり考えた物を出してきたのだな、という気にさせられます。カドがあると犬には危ない、なんてデザインする時にまず最初に思いつきそうなものですが、この旧来の狂犬病予防注射済票は見事に長方形のカドのあるデザインですね。
同様にデザインを変更することで装着率を上げようという試みは他の自治体でも起こりつつあるようで、今年の4月から変更したのが新宿区/港区/北区の例。こちらは3区合同で同じデザインの導入を決めました。それがこちら。

犬型犬鑑札で装着率アップ。新デザイン犬鑑札へ変更 - 犬 ニュース01より引用
うーん。これはこれでかわいいんですが、例えば丸みはあれどちょっと危なっかしいカドの立ち方をしていますし、そもそも見た目が主張しすぎの感がありますね。チワワみたいな小型愛玩犬の飼い主ならば喜びそうですが、例えば黒ラブに喜んで着ける飼い主は…恐らく、少ないでしょう。色んな犬種がいて色んな趣向の飼い主がいる、その中で全体の装着率を上げるというのには、ちょっとそぐわないデザイン*3ですね。この辺りはさすが、MUJIの深澤!というところでしょうか。
この犬型ドッグタグは都内の他の区へも変更を推進していくとのことで、既に千代田区台東区などでも採用の動きがあるとかないとか*4。世田谷区では既に動いているプロジェクトがあったからなのかもしれませんが、しかしこの犬型ドッグタグ推進の流れを蹴る形で深澤直人デザインを選択したというのは、なかなかやりますね。いいぞ、世田谷区。素晴らしいぞ、世田谷区。
にしても…犬、飼いたいなぁ……(深澤デザイン犬鑑札も欲しいし)。

*1:ドッグタグ。犬の登録票/狂犬病予防注射の接種済票

*2:従来はステンレス?

*3:色々と議論のあるところですが、これはそもそも正しい意味での"デザイン"とは呼べないかも知れませんね。

*4:ネット上でははっきりとは確認できませんでした